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**Diary**

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手術承諾



手術承諾


平成15年7月19日

今日は、イガ丸の手術の説明の日だ。午後3時からの予定。朝から、時計が気になって仕方がない。やっと、イガ丸の病気の事が詳しく分かるんだという気持ちの反面、できれば知りたくないと言う気持ちで複雑だ。パパに、
「ねえ。イガ丸は今こんなに元気なんだからさ。もしも先生が手術をして命を落とすこともあり得るって言ったら、もうこのまま連れて帰りますって言おうよ。長く生きれなくても少しでも元気でいられる間、家でブブ香と4人で仲良く過ごさしてあげた方がいいよね。」
って言ったら、すごく叱られた。
「イガ丸の生きる権利を僕たちが奪うことはできないだろう。」
パパはイガ丸の病気が分かってから、とても冷静だ。私が悪い方にばかり考えていても、パパはいつも前向きにいい方にいい方に考えている。どれだけ、救われたことか…。

今日に限って、土曜日なのに面会に来てくれる人がいなくて説明の席にイガ丸を同席させることになってしまった。イガ丸は壁に掛かった自分のCTやMRIの写真を見て
「ねえ、これ何?おかしいねえ」
とかなり面白がっていた。イガ丸の頭だよ。と教えてやるとすごくびっくりしていた。

先生は極めて冷静に、イガ丸の病気のこと、手術がどの様に行われるか、手術の時に起こりうる危険性について、手術後に起こる後遺症、合併症についてを説明してくれた。

「イガ丸の病気について」

・小脳から第4脳室にかけてかなり広い範囲にわたって大きな腫瘍がある。(MRIの写真初めて見たが、かなり大きく驚いた)
・脳幹という生命を司る部分に張り付いていると思われる。
・水頭症の所見が見られ、急変する恐れが極めて高く、入院治療が不可欠である。

「手術の方法について」

・腹這いにして、頭部を固定して行う。
・脳幹に接している部分の腫瘍を取り除くため、できるだけ神経を傷つけることのないよう、顔面にセンセー(もしも視神経を触れば、目の部分のセンセーが反応するようにモニターをつける)をつけて手術に臨む。
・後頭部の筋肉を切り、更に頭蓋骨を2つ取り外して手術を行い、術後は1つだけ戻す。(もう一つはいらないそうだ。なくても生活には支障はないそう)

「手術時の危険性について」

・血管造影の検査の結果、腫瘍が血管をかなり多く巻き込んでいる可能性が高く、取り出すときに多量の出血が予想される。輸血が必要である。(同意書を書いた)
・腫瘍が脳幹にどれだけ張り付いているかが、今回の手術の大きなポイント。これまでの所見から、考えられるイガ丸君の腫瘍は2種類。
1つは「髄芽腫」。男児に好発する腫瘍。悪性腫瘍。しかし、化学療法・放射線治療に顕著に反応し、治療成績が上がってきた。ただし、3歳児以下の小児にはコントロールが難しい。この腫瘍ならば、脳幹を傷つけることなく腫瘍を取り残したとしても後の治療に期待できる。
もう一つは「上衣腫」良性(ゆっくり増殖する)のものから、悪性のものまで様々。良性の場合、手術による可及的摘出しか根治の道はない。この腫瘍だった場合、術中の判断により多少の障害を覚悟した上で(脳幹を触ると言うこと)摘出を行う。

「術後の合併症、後遺症について」
・感染症、肺炎の併発。
・後頭部の傷口からの感染、髄液が漏れることによる感染症。
・脳幹を傷つけた事による、後遺症は次のものが考えられる。
(1)座位の困難
(2)立位の困難
(3)歩行の困難
(4)咀嚼の困難(鼻から栄養チューブを入れるという話だった)
(5)呼吸の困難(喉の部分を切開し気管チューブを入れるらしい)
(6)顔面麻痺
(7)意識障害
(8)言語障害
(9)記憶障害
・術後しばらくして、「無言症」というものに陥る子どもが少なからずいる。(これは脳を触ることにより、一時的な精神的ショックに陥ることにる障害らしい。数週間、数ヶ月で治る障害だと言われる)

難しい話も多かったが、もう全面的に先生を信頼してイガ丸をお任せするしかないと言う感じだ。

イガ丸の腫瘍の種類が良性かも?と先生に言われ、
「良性って言う可能性もあるんですか。よかった。」
と先生に言うと、先生の見解は全く異なっていた。
「僕は、悪性の方がいいなと思ってるんですよ。悪性ならば、全く脳幹を傷つけずに手術を終わることができる。でも、良性ならば絶対に全部取ってこなくては行けない。と言うのも、上衣腫(良性の腫瘍)は放射線や化学療法があまり効かないんです。脳幹を傷つける可能性が非常に高くなりますからね。非常に良性の場合はやっかいです。」
胃や肺と違って、脳腫瘍は正常な脳の中に腫瘍ができるわけだから、いくら良性といえども取るときに傷つけたら高度障害が残ってしまうと言うことだ。なかなか難しい。

最後に先生に聞いた。
「イガ丸はこの手術中に命を落とすと言うことはあり得ますか?もしも、そうならば、手術をするのをやめて家に連れて帰ろうと思うんですが」
先生は、
「一か八かの手術は僕はしませんよ。絶対に治ると思って手術には臨みます。」
「よかった。先生の話を聞いて何だか安心しました。」
と私が言うと、先生は最後には厳しい顔で
「でもね、お母さん。この手術は甘い手術ではありませんよ。いろんな面で覚悟する部分も必要かもしれません」
先生の言葉が重くて、とても心に響いた。

多少の障害は覚悟しなくては行けないかもしれない。命さえあってくれれば…。

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